グロテスク
2008 / 01 / 25 ( Fri )
 しばらく前に桐野夏生氏の「グロテスク」を読んでから、なんとも言いようのない後味が私の中に残っていて、ここ最近、この物語のモデルとなった「東電OL殺人事件」について調べたり関連図書を読んだりしていた。

 この事件を記憶にとどめている人は多いと思うけれども、あえてちょっと書いておくと、平成九年三月、渋谷の円山町で起きた殺人事件である。被害者の女性が、日中は東電の管理職を務めるエリートOLでありながら、夜は毎晩渋谷で売春するという生活をしていたために、非常にセンセーショナルに世間を騒がせた事件である。
 私は、この事件をおぼろげにしか覚えていなかったが、「グロテスク」はフィクションもまじえながら、かなり忠実にこの事件をなぞらえている。
 この事件について知るために、佐野眞一氏による「東電OL殺人事件」というノンフィクションを読んだ。この本には、事件や被害者のありさま、関係者への取材、裁判の成り行き等がかなり詳細に書かれていたので参考になった。でも、読んでいて実はあんまり好感持てなかったんだけど。なぜなら、被害者の女性を妙に美化しているようなくだりがあるかと思えば、結局のところ彼女を扇情的に描いていたり、周辺部分に妙に文学的表現をちりばめたりして、自己陶酔の香りが漂っているからである。。。彼女を「神々しい」だの「マリア」だの、社会のひずみのすべてを代弁しているかのように崇めるのは、きっと筆者が事件に(彼女にではなく)惚れてしまったからなのだろう。ノンフィクションライターならば、もう少し冷静に表現してほしかったが。
 私は、この女性のことを考えるたび、他者と交われない自意識の壁や、すえた焦りのにおい、アイデンティティのからまりを感じて、不憫に思うと同時に恐ろしくなる。のぞいてはいけない井戸の中を、彼女はのぞいてしまったのだろう。たぶんその井戸は、私の庭にもあるのだろう。

 「グロテスク」には、この女性をモデルとした和恵という少女が出てくる。彼女のまわりにさまざまなタイプの少女が配され、恣意的に、あるいは無意識的に、彼女の人格を少しずつ侵食していく。女ならではの暗黙の力関係を実によく描いているなあと思った。
 ユリコという絶世の美女が、和恵を含めて、さまざまな女の人生を変えてしまったように、美しさはやはり伝家の宝刀なのである。あるいは、陰で猛勉強に励みながら周囲にうまく適応しているミツルのしたたかさ。美しさ、若さ、謙虚さ、性的な魅力、そういったものに対する評価が、学歴や能力に対する評価を凌駕する。そんな現実を前にしたとき、滑稽なまでに真面目な和恵はどれだけ当惑しただろうか。
 でも、この作品のおもしろいところは、さまざまな道をたどった少女たちの末路は、結局のところ似通った堕落に行き着いているところだ。美しさも若さも一過性のものだし、結局のところ他人に自分を映しているに過ぎない魅力だから、当たり前のことなんだけど。
 女性の価値は、現代に至ってもダブルスタンダードだ。真面目な彼女が、極端な形で両方の価値を追求してしまったことは、ありえることだ。

 もうひとつ思うことには。
 以前、カウンター・カルチャーについて考えたときにも思ったことだけれど、人間は両極の間でバランスをとりながら生きているんだと思う。とすると、売春をすることによって彼女がバランスをとっていた、逆側の強い負荷がきっとあったと思うのだ。それはなんだったのだろうか。敬愛する父親を失ったことか、仕事上のストレスなのか、女性性の承認欲求なのか・・・本人亡き今、言葉の一片で彼女を解釈することは避けたいが、私は彼女は自分でも制御しきれないものに苦しんでいたと思う。
 そして、バランスの支点は、どこなんだろうか。この場合の支点は中間点ではなくて、もともとその人なりの支点があるような気がする。何にでも文句を言って結局不幸な選択ばかりしてしまう人は、きっとそこがちょうど平衡になる支点なのだ。いいことがあっても、バランスレベルが低ければきっと無意識に厄介ごとを持ち込んで、バランスを合わせてしまうものだ。しかし、片方に売春を乗せるバランスって、どれだけバランスレベルが低いんだろう。彼女は自分を許さず、認めず、ずっと自分の尻を叩いていたのだろうか。


 つらつらと思いつくままに書き連ねてしまったが、私が何より気の毒だと思うことは、この事件の裁判の様子をたどっていると、いつしか被害者の彼女が被告人ではないかと思うような扱いをされていることだ。それほど、彼女は暴かれ、守られなかった。

 彼女の尊厳に、合掌したい。
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胎動
2008 / 01 / 21 ( Mon )
 19日、5月の舞台にお誘いした役者さんたち4名と、出演交渉を兼ねて顔合わせをした。そして、今回制作としての協力をお願いする青木晶子さんも含めて6名で居酒屋へ。
 プロデュース公演は私にとっても初めてなので、ちょっとドキドキ。出演交渉のために企画書や予算案、稽古日程などを準備した。ここで脚本を渡せればカッコよかったけど、まだゆっくり書いているところ。
 今回は、あえて全員初顔合わせの役者さんたちに声をかけた。いや、もちろん私は全員知っているけど、共演はもちろん顔を合わせるのも初めましての人たち。最初はちょっと固い空気だったが、次第に打ち解けて和やかな飲み会になった。
 目の前に顔がそろってみると、あらためて期待が高まる。この顔ぶれで、いったいどんな化学変化が起こるのか。そして後日、全員から出演の快諾をいただき、ますますこれからが楽しみになった。
 公演を控えた役者さんもいるので、稽古は4月から。私にしては短期間で、集中して作る。稽古開始までに時間があるので、本書きも含め、周辺の仕事をていねいに進めておこう。
 詳細は、近日中にホームページ等でお知らせします!

かむゐ 話は変わり、知り合いに誘われて、「剣伎衆かむゐ」の公演を見に行った。海外でも殺陣のショーを行ったり、地球ゴージャスで殺陣の振り付けをしたりと、非常に精力的に活動されている殺陣集団だ。
 ここの殺陣が!いやぁ、カッコよかったよ。
 殺陣のショーを中心とした三部構成で、ストリートダンスともコラボしつつ、和風なのに現代的。まさしくソードアートと呼ぶにふさわしい仕上がりになっていた。ああいう殺陣もあるんだなあ。

 もちろん、われらがリバーサイド殺陣教室も、最近新しいメンバーが着々と増えて、にぎやかに活動中。リバーサイド・アーティストも、年末にいよいよ主宰・櫻井氏の積年の夢であった大型時代劇に向けて動き出すとか。楽しみだなぁ!
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カルトにご用心
2008 / 01 / 13 ( Sun )
カルト要注意! 昨日、メタ認知スキルの研究会があって母校へ行った。
 学内のあちこちに、写真のような看板が。。。
 ひえぇ、私が学生のころにはなかったよ;;
 それだけ、カルト宗教にまつわるトラブルや事件が多いということなんだろうなあ。
 学生時代というのは、いろいろなことに思い迷ったり、不安になったりするものだから、優しく差しのべられる手につい飛びついてしまう危険もあるのだろう。また、自分で好きなように行動選択できる自由に対して、それに付随する責任やリスクを背負う現実認識が薄かった気がする。好きなことをしていながら、どこか自分は安全であるという甘えがあった。思えば、みんな危ない橋を渡ってきたものだ。

 さて、月一ペースで行われてきたこの研究会、なかなか人が集まらなくなってしまって、今回を機に当面休会という運びになった。私はまだ参加させてもらって一年ぐらいだったので、もっと勉強したかったのだけれど、残念。。。任意で集まる集団が継続していくことの難しさは、いずこも同じらしい。
 今回、話題にのぼった中で、おもしろいなぁと思ったことは、「議論に負けたからと言って、思い通りになる必要はない」ということだ。ある対立する意見や、気が乗らない勧誘に出会ったとき、自分の考えを上手く相手に伝えられなかったり、理解してもらえなかったり、逆に相手の理論に対して論理的な反対意見を出せなかったりすることは、ままあることだ。しかし、だからと言って相手の言いなりになったり、気の進まない行動に出る必要はないのであって、最後は「何が何でも嫌なのだ」あるいは「何が何でもこれはやりたいのだ」と居直る権利が誰にでもある。
 これは、ちょっとした落とし穴だったなあと思った。自論に固執しないために、他者との議論を辞さないことは大切だし、そうであるように私たちは育てられている。真面目な人ほど、人の意見に耳を傾けたり、論破できない自分に自信をもてなくなったりするだろう。けれども、議論に乗せられて、自分でも予想だにしていなかった彼岸まで運ばれてしまってはいけない。おかしいとか、嫌だとか思ったら、船を降りてもよいのだ。

 議論とか、意地とか、盲従とか、妄信とか、執着とか、一貫性の追求とか。
 そういうものに自由意志を操縦されてしまうとき、人は本当に支配されてしまうのだろう。
 来る途中に目にした看板を思い出しながら、そんなことを思った。 
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遅ればせながら
2008 / 01 / 05 ( Sat )
2008年お正月 遅ればせながら、新年のごあいさつ。
 みなさま、あけましておめでとうございます!
 2008年、平成20年のスタートです。
 平成生まれが、もう成人する年なんですねぇ。

 今年はどんな年になるのでしょうか。
 世界ではどんなことが起こるのでしょうか。
 平和で充実した一年になりますように。

 元旦は、いつものように初詣へ行きました。
 帰り道、今年初居酒屋で、初ビール。

 今年も、どうぞよろしくお願いします♪

 
 さて、2日から北海道へ行ってきた。
 気温の低さに恐れをなして、マフラー・耳当て・手袋・ブーツの完全装備。でも、たしかに気温は低いけれど、東京の凍える寒さと違って、北海道の寒さはどこか気持ちがよかった。湿度が違うのだろうか?
 北海道では、定山渓温泉と登別温泉で温泉三昧。雪の降りしきる中での露天風呂は最高。長湯してものぼせないやわらかいお湯なのに、湯上がりは体が芯から温まってぽかぽかだった。
 そして3日目に立ち寄った小樽ではお寿司三昧。大好きな海の幸がおいしかった♪
 ちなみに、おみやげに買おうと思っていた「白い恋人」はどこへ行っても完売だったよ。消費期限改ざん騒動がかえって話題を呼んで、売り上げを伸ばしているのもなんだか皮肉な話だ。
 それにしても北海道は広い。大きな大きな自然に触れて、久しぶりに深い呼吸をした感じだ。また今度、暖かい季節にも来てみたいな。
クッタラ湖
雪景色のクッタラ湖。神秘的なまでに美しい。
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